林氏:
優先株式の発行に関する書面に関しては、日本とアメリカを比較すると、意味内容は全体を通して概ね似ていますが構造は少し違っています。
日本の場合は、株式の内容を定める「定款」、出資の金額、時期、条件等を定める「投資契約書」、株主の権利等について定める「株主間契約書」の3点、又は、分配に関するルールを株主間契約書とは別の契約書で定める場合は4点、が基本的に必要です。
一方、アメリカでは、Certificate of Incorporation、SPA(Stock Purchase Agreement)、IRA(Investors’ Rights Agreement)、ROFR(Rights of First Refusal and Co-sale Agreement)、VA(Voting Agreement)の5点が基本セットになります。この5点のうち、IRA・ROFR・VAは、日本の株主間契約書に相当します。
従いまして、事業会社の方がアメリカのスタートアップに投資をするとなると、発行体から送られてきた、この5点セットをレビューするのが、投資に必要な主な作業となります。この5点の書面は各20頁、合計100頁ほどに及ぶものであり、実際の契約締結にあたっては、このような長い契約書をいきなり見るのは大変なので、「Term Sheet」と呼ばれる、主要な条件を記載したもので合意してから、長い契約書を作成します。
※当日は、スタートアップ投資の概要、優先株式による投資、Convertible Securitiesによる投資、そしてバイオ・ヘルスケア分野への投資という題目で、順にお話をいただきました。