2022年9月12日((月))に「マイクロ・ナノ工学を使用した生体デバイスの今と未来~ここまで出来た‟Body on a Chip”~」が大阪健都会場とオンラインのハイブリッドにて開催されました。今回は、幹細胞についてといった基礎的なお話から、Body on a Chipの研究開発の現状、開発における課題点、そしてBody on a Chipの進歩や今後の展望について、亀井先生からお話を詳しくお伺いいたしました。こちらのレポートでは、当日のお話の一部をご紹介させていただきます。


亀井氏:
現在注目されている多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)は、大変応用性が広い細胞ではありますが、目的の細胞だけをつくることや成熟した細胞をつくることが難しいと言われており、いかに目的の細胞・機能的な細胞を作り出すのかが研究の着目点となっています。
私は、これらの目的の細胞・機能的な細胞をBody on a Chipに埋め込むこと自身が、将来的な生体模倣につながっていくと考えています。それを実現していくためには、生体内において、細胞がどういう環境にいるのか、ということを理解する必要があります。
幹細胞は生体内において、様々な環境因子にさらされています。つまり、適切な細胞外微小環境を作り出すことが細胞機能を引き出す鍵となっているのです。それを引き出す鍵として私たちが使用しているのが、ナノ・マイクロ工学です。
動物細胞の大きさは、直径が約数マイクロから数十マイクロメートルとなり、これらの動物細胞をとりまく環境を制御できるのがマイクロ工学です。また、動物細胞よりももっと小さい分子レベルや細胞レベルの小器官の領域がナノメートルの領域となり、それらを制御するためにナノ工学が非常に重要な役割を果たしています。
このナノ工学とマイクロ工学をうまく結びつけることによって、さらに細胞を自分たちの思い通りに制御することができるようになるのです。
実際に細胞操作に使われているナノ・マイクロテクノロジーは様々ありますが、それらのテクノロジーを融合することが細胞操作には必要となってきます。

亀井氏:
本日は創薬スクリーニングでどうナノ・マイクロテクノロジーが活躍しているのか、という点に焦点を当ててお話いたします。
私たちは、これまで様々な臓器をBody on a Chipとして再構成してきました。これらのBody on a Chipが必要とされる場面のひとつが「創薬」の場面です。
これまでも一つの薬を開発するためには、10年以上また、1千億円以上の費用が必要となり、長い期間とコストがかかる点、そしてそれらの犠牲を払ったとしても認可を受けられるかわからないという点が問題となってきました。
創薬の過程における問題点としてまずあげられるのは前臨床試験です。
実験動物を用いた動物試験ではヒトの整理反応を予期することはできず、また倫理的な問題もあります。Body on a Chipを使えば、将来的に動物を使わない研究開発が可能になると私たちは考えています。


※当日は幹細胞の種類のお話から、実際に先生の研究開発実例、そしてBody on a Chipの新しい可能性までお話をいただきました。

最後に
当日は、基礎的な幹細胞についてのお話から、Body on a Chipの今後の展望まで、亀井先生に丁寧にご説明いただき、理解の深まるイベントとなりました。
ご視聴いただきましたみなさま、ありがとうございました。



<「京都大学高等研究院物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)」のご紹介>
京都大学アイセムス(高等研究院 物質-細胞統合システム拠点)では、細胞を制御する物質を創りだして生命の謎を探求するとともに、生命現象にヒントを得た優れた材料を創りだす研究に取り組んでいます。

https://www.icems.kyoto-u.ac.jp/
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