2022年11月9日(水)に「~たんぱく質不足を救え!~工学的細胞デザイン技術に基づいた培養肉の発展」が大阪健都会場とオンラインのハイブリッドにて開催されました。今回は   先生の研究の基礎的な内容の説明から、どのようにしてその着想に至ったのか、具体的に製薬や培養肉作成にどう役立つのか、そしてタンパク質不足を救う培養肉にフォーカスし今後の展望についてなど、お話を詳しくお伺いいたしました。こちらのレポートでは、当日のお話の一部をご紹介させていただきます。
松崎氏:
細胞の機能を制御しているものの一つに、細胞外マトリックス(ECM)があります。たとえばコラーゲン、フィブロネクチン等、糖タンパク類がこれにあたり、細胞表面のレセプターや増殖因子と相互作用しながら、細胞を増殖させたり分化させたりと、様々な機能を担っています。また、細胞同士が組織化を行う際、細胞と細胞をつなぐこともECMの役割です。
私たちの研究室では、細胞の周辺環境に影響を与える高分子(合成高分子、タンパク質等)を使って、組成制御、膜厚制御、電荷制御等を行い、分化誘導やタンパク質組成等の機能制御の基礎研究を行っています。
その中でも現在は、三次元的な組織化をメインに研究を進めています。

松崎氏:
私たちが研究を進めている構造化培養肉の作成の手順としては、まずは、と畜された直後の肉の塊を送ってもらい、届いた肉からサテライト細胞と脂肪由来幹細胞を抽出、そして培養します。次に、培養された細胞を使い3Dプリンターで細胞プリントし、さらに分化誘導することにより、筋細胞・脂肪・血管を作成します。そのようにして作成された細胞ファイバーを、肉の構造に基づいた設計図にあわせて手作業で組み合わせることで、培養肉を作成していくのです。
ただ、残念ながら、現在細胞ファイバーにはヘモグロビン等血液成分が含まれていないため、「色」がありません。現在は食紅で着色をして作成していますが、世界的にも培養の過程で自然に着色に成功した事例はなく、培養肉の研究開発における大きな課題の一つとなっています。

最後に
当日は、松崎先生の研究開発内容に関してだけではなく、培養肉がなぜ必要だと言われているのか、市場規模について等も詳しくお話いただき、培養肉の開発の今後が大変楽しみとなりました。ご視聴いただきましたみなさま、ありがとうございました。



<「大阪大学大学院 工学研究科 応用科学専攻 松崎研究室」のご紹介>
 松崎研究室では、細胞や生体分子の機能をデザインする高分子材料の分子設計と合成、また、医療や創薬、食分野への応用を研究しています。
研究室URL:http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~matsusaki-lab/

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